7月28日 アートインフォメーション 上原美術館
上原美術館では現在企画展として、近代館で「であう、はじまる―画家たちの初期作品」、
仏教館では「伊豆 民間仏めぐり」を開催中です。
今回は、近代館の「であう、はじまる」から、まずゴッホの作品を紹介します。
この絵はゴッホが27歳頃、独学で絵を描き始めた頃の作品です。
ゴッホといえば、激しい色彩のイメージですが、37歳で亡くなるわずか10年のうち、
その初期の作品は、暗いものが多く、鉛筆などによる作品を多く描きました。
ゴッホの絵が明るくなるのは、オランダからパリに出た32歳の頃からです。
27歳まで、様々な仕事につきますが、なかなか続かず、
最後は父と同じ聖職者になろうと決意しましたが、夢中になり過ぎて、
やり過ぎと破門されてしまいます。
そして失意のうちに目指したのが画家で、その頃に描かれたのがこのデッサンです。
ゴッホは特にミレーに憧れていたため、ミレーを手本に農民の姿を描きました。
この繊細な鉛筆の線は、独学でミレーを描こうとしたゴッホの真面目さや繊細さが
現れているようです。
また、ゴッホは「種をまく」=命の再生、「刈り取る」=命を刈り取る、
ということを暗示して描いているとも言われ、宗教的な生命への眼差しが垣間見られます。
ちなみにゴッホは亡くなる前年には、激しい色彩で「鎌で刈る人」を描いています。
この絵は、2015年にベルギーで開催された『ボリナージュのファン・ゴッホ』展に出品されています。
次は安井曽太郎17歳頃のデッサンです。
安井は16歳で画塾に入りましたが、当初からデッサン力がずば抜けていたそうです。
20歳になるとパリに渡ますが、フランスの画塾でも頭角を現し、
そのコンクールでいつもトップの成績であったそうです。
そしてセザンヌの影響を受けて、以下の「風景」のような作品を描きました。
そして、パリから帰国した安井は生活環境の違いから、10年ほど絵が描けないスランプに陥ります。
そんなスランプから抜け出したころの絵が以下の≪薔薇≫です。
この絵は、独特の力強さに加えて、明るい色彩が輝いていますが、
安井がスランプを経て自分を確立したこのような絵は
やがて安井様式と呼ばれるようになりました。
安井のように、多くの画家たちも、悩みながら自分と向き合い、
やがて独自のスタイルを見つけていくことが多いようです。
今回の展覧会では、そうしたピカソやゴーギャン、シニャックなどが
若い頃に描いたの作品も展示しています。
画家たちがまだ名を成していない頃の、瑞々しい感性を
ぜひお楽しみいただければと思います。
美術館基本情報
上原美術館 下田市宇土金341 電話:0558-28-1228
●展示:近代館「であう、はじまる―画家たちの初期作品」
●会期:開催中~2025年9月23日(火・祝) 会期中無休
●開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
●入館料:大人1000円、学生500円、高校生まで入館無料 *近代館・仏教館の共通券です。
●近代館に隣接する仏教館では「伊豆 民間仏めぐり」を同時開催中です。