11月25日 アートインフォメーション 上原美術館
上原美術館では現在、近代館で「ものがたりをよむ」、
仏教館で「仏像でみる伊豆の平安時代」という展示を開催中です。
今回は近代館の展示について紹介します。
現在開催中の展覧会「ものがたりをよむ」は、
歴史や文化を越えて、古くから人々に親しまれてきた「ものがたり」に
注目していろいろと展示しています。
今回はその中で、「伊勢物語」を題材に描いた作品を2点ご紹介します。
「伊勢物語」は125段からなり、和歌を核として男女の恋愛、肉親の情など
短編の物語が記されています。
今回紹介する作品は第23段「筒井筒(つついづつ)」と、
第6段「芥川(あくたがわ)」が題材となっている日本画です。
これらの作品を描いた小林古径は、歴史や文学への造詣が深く、
物語や謡曲をはじめ、仏教などを題材とした絵画をたびたび描いています。
なかでも『伊勢物語』は古径のお気に入りの主題でした。
第23段「筒井筒」に想を得た≪井筒≫(1950年頃、上原美術館蔵)は、
新収蔵作品で、本展にて初公開の作品です。
ここでは幼馴染の男女のエピソードが書かれています。
井戸の囲いの周りで、背をくらべあう男女の幼馴染のようすが描かれています。
作品からは無邪気に遊ぶ子供時代の情景が浮かぶようです。
≪芥川≫(1926年頃、上原美術館蔵)は、第6段「芥川」をもとに描かれています。
物語は、ある男が長年思いを寄せた女と逃避行をするのですが、
雷雨の中、夜も更けて荒れ果てた蔵に逃げ込み、夜明けを待つことにしました。
ところが、蔵の中に現れた鬼に女が食べられてしまいます。
この作品では鬼が女の前に現れたその場面を描いています。
薄墨で闇の中に描かれた女性と鬼、その周辺に広がる余白が
見るもののイメージを膨らませます。
画家たちのまなざしでみる「ものがたり」は、
私たちをより深くその世界に誘ってくれます。
画家たちが描き出す「ものがたり」の世界をどうぞお楽しみください。
美術館基本情報
上原美術館 下田市宇土金341 電話:0558-28-1228
●展示:「ものがたりをよむ」【近代館】
●会期:開催中~2025年1月13日(月・祝) 会期中無休
●開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
●入館料:大人1000円、学生500円、高校生まで入館無料 *近代館・仏教館の共通券です。
●仏教館に隣接する仏教館では特別展「仏像でみる伊豆の平安時代」を同時開催中です。