2月27日 アートインフォメーション 上原美術館
現在、上原美術館では、特別展『梅原龍三郎と伊豆』、を開催中です。
梅原龍三郎は生涯を通じて伊豆を訪れました。熱海、江ノ浦、大仁、三津など、伊豆の各地に足を運び、制作に励んでいます。
梅原龍三郎≪熱海風景≫大正6(1917)年 東京国立近代美術館蔵 |
梅原は20代でフランスに留学し、帰国後は、思うように描けないスランプの時期がありました。日本各地に赴き風景画に取り組み模索しますが、なかでも好んでしばしば訪れていたのが伊豆でした。岬と海が入り組み、どこか留学時代に訪れた南欧の風景に似ている伊豆は、樹々が青々と茂り生命感に満ちていて、梅原好みだったのでしょうね。熱海で描かれたのが29歳の冬に描いた≪熱海風景≫です。
遠くに海が見える景色は、梅原が師事したルノワールの邸宅の庭を思わせます。梅原はルノワールと海の見える庭を散策した思い出があり、熱海の風景と南フランスの地中海の景色を重ねみていたかもしれません。
梅原龍三郎≪江ノ浦 残月≫昭和11(1936)年 上原美術館蔵、新収蔵・初公開 |
スランプの時期に描かれた≪熱海風景≫は、成し遂げようと模索するが故の強いエネルギーと梅原のもつ鋭い色彩感覚が相まって、不思議な魅力を持つ作品になっているように私には感じられます。
その後、スランプを抜け出し、梅原が独自の画風を確立した頃に描かれた≪江ノ浦 残月≫も穏やかな伊豆の風景を描き出しています。≪江ノ浦 残月≫は、新収蔵され、本展で初公開の作品ですよね。
また、戦時中は、伊豆・大仁に疎開をし、大仁ホテルに滞在して制作に励みました。大仁ホテルから見える富士山を多く描き、戦後、さらに富士に魅了された梅原は富士山シリーズを生み出しています。富士山は三津にある知人の別荘からも描いており、淡島の向こうに見える生命感あふれる姿を描いています。
今回は梅原が描いた富士山を7点展示しております。それぞれに味わいがありますのでぜひご覧ください。本当に、梅原の画業には伊豆が大きくかかわっていますね。
今回の特別展では、梅原が残した伊豆日記の初公開されているのですが、そこからも伊豆との深い結びつきを感じられます。
親しみ深い地域と縁があることを知ると、梅原龍三郎がぐっと身近に感じられますね。
ぜひ梅原龍三郎の伊豆を描いた作品や、梅原の初期から晩年の代表作を通じて梅原芸術の魅力をお楽しみいただければと思います。